左足の膝下から、白いヒモが飛び出していた。ヒモはガーゼをよった様な布製で、端っこを引っ張ってみると、肉の内側からズルズルと引き摺り出された。引っ張り出した部分に血はついていない。内側の肉が引っ張られる感覚に耐えながら、ヒモを出せるだけ引っ…
虚無。 7時間19分0秒。
屋敷内の探索を終え、暗い玄関ホールに辿り着く頃には、私たちの体力はほとんど底をつきかけていた。私と、私の2人の仲間は、ほとんど体当たりするように玄関扉を開け、実に数時間ぶりに外の空気を吸い込んだ。刹那、仲間の1人が「わあ」と叫び、何かに引っ…
ホームルームが終わって放課後。トイレに行って、さあ帰ろうと思い、教室に入ると、私と同じ班の3人が教室を掃除していた。私は、今日が掃除当番の日であることを思い出した。3人は、教室に入って来た私には目もくれず、机を移動させ、床にモップをかけて、…
虚無。 6時間13分42秒。
私の刺殺を企んでいる殺人鬼がいるらしい。刃渡り20センチの包丁を振り回して、私を探している。殺人鬼は大柄な男で、左腕にある3針縫った傷跡が目印だという。私は、家中の窓に鍵を掛け、雨戸を下ろし、真っ暗な自室にこもって、内側から全身でドア押さえつ…
玄関扉の上部の壁に、ネジ穴が1つ空いていた。私は鍵ではなく、アルミ製のハンガーの持ち手を、そのネジ穴に差し込み、思い切り右に回した。ガラガラという轟音と共に、家の中にある数個の部屋が、まるで観覧車のように、地中から地上へ、地上から地中へ、時…
虚無。 6時間19分6秒。
相棒と2人1組のペアで、ドラゴンと戦うミッションが与えられた。相棒とは「明日10時半に、学校の昇降口に集合ね」と約束していたのだが、時間になっても相棒の姿が見えない。私は相棒を探すために、彼女がいつも学校帰りに通っている塾まで行ってみることに…
「フィナーレの直前に、ステージ中央の脚立に登れ」と言われた。舞台袖からステージを覗いてみると、確かに、照明で照らされた明るいステージの中央には、高さ2メートル弱の脚立が聳え立っている。私は、本番直前の変更事項に震えてしまって、しかし何よりも…