夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第279夜

屋敷内の探索を終え、暗い玄関ホールに辿り着く頃には、私たちの体力はほとんど底をつきかけていた。私と、私の2人の仲間は、ほとんど体当たりするように玄関扉を開け、実に数時間ぶりに外の空気を吸い込んだ。刹那、仲間の1人が「わあ」と叫び、何かに引っ張られるように、後ろにビュンと飛んでいった。振り返ると、屋敷の奥の暗闇から、巨大なタコの足のような、ゴムのように弾力のある異様に長い人間の腕が2本、伸び出して、仲間の1人を鷲掴み、あっという間に屋敷の中まで引きずり込んだ。私と、残ったもう1人の仲間は、慌てて駆け寄ったが、玄関扉はバタンと乱暴に閉められ、内側から鍵まで掛かっている。私は、玄関扉の真ん中にある、縦長の覗き窓にへばり付いて、暗い屋敷内を覗き込んだ。すると、ドン、という衝撃音と共に、屋敷内から覗き窓に何者かが衝突した。窓ガラスに衝突したのは、先ほど引きずり込まれて行った仲間だった。完全にドラキュラ化して、青白く、ゾンビのように溶け始めている仲間の顔が、窓ガラスの反対側に張り付いていた。

8時間58分24秒。