夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第272夜

「フィナーレの直前に、ステージ中央の脚立に登れ」と言われた。舞台袖からステージを覗いてみると、確かに、照明で照らされた明るいステージの中央には、高さ2メートル弱の脚立が聳え立っている。私は、本番直前の変更事項に震えてしまって、しかし何よりも、高所恐怖症なのに脚立に登らなければならない、という試練に打ちのめされていた。客席から拍手が沸き起こり、客電が消灯した。曲が始まって、ステージに一歩足を踏み出した、その瞬間、私は、今かかっている曲の振付すら何も覚えていないということに気が付いた。

9時間0分33秒。