夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第365夜

都内の駅中にある大型書店でアルバイトをしていた。数百平方メートルの広大な店内には、背丈よりも高い本棚が果てしなく整列している。本棚の列を抜けると、店の最奥部には、店内の本を寝転がって読めるスペースがあり、ピンク色のカーペット地の床に、大小様々な形の枕が乱雑に置かれていた。今日は地域の読書クラブが、その「寝転がりスペース」を使っている。私は店内の床をモップで拭きながら歩き回っていたのだが、例のスペースまで来たところで、寝転んでいる人の枕元に置かれたコップにモップを引っ掛け、倒してしまい、熱々のコーヒーをカーペットと私のスニーカーにぶちまけてしまった。寝転がっていた全員が顔を上げ、私の足元を真顔で凝視した。私は慌ててバックヤードまで走って、雑巾とゴミ袋を握りしめて駆け戻り、客たちに謝りながらカーペットを拭き、コップを摘み上げてゴミ袋に入れた。ふと顔を上げると、コーヒーをこぼした箇所より少し離れた場所に、誰の物か分からない小腸の束が落ちていた。血まみれのそれを摘まみ上げ、さらにゴミ袋へと詰め込んだ。半透明のゴミ袋は、コップと小腸でパンパンに膨れ上がった。

5時間54分15秒。