夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第224夜

そのケージの中には1匹の猫がいた。ピンクがかった薄茶色の体に所々白い毛が混ざる、トラ柄の猫だった。大きさは手のひらに収まるほど小さく、ケージの中でぎゅっと丸まり、目を細めて眠っていた。私は、このままでは猫が死んでしまうのではないかと思い、慌ててケージの戸を開いて、両手でそっと猫を掬い上げた。猫の顔を覗き込むと、細まった目尻からは、開けっぱなしの蛇口のようにタラタラと絶え間なく涙が流れていた。私は両手で猫を包み込んで、懸命に温めた。安心したのか、猫は徐々に膨らんでゆき、あっという間に仔犬ほどの大きさになり、流石に手のひらには収まらなくなって、両腕で赤ちゃんを抱く様に抱っこした。なおも膨らみ続ける猫に、私も「頑張れ、頑張れ」と声をかけ続けて、いよいよ中型犬のような大きさになりかけたというところで、次の瞬間、猫はアシカのぬいぐるみに変身した。

10時間10分25秒。