夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第75夜

洋館に到着した。正面玄関から入ると、玄関ロビーにて3人の女性に出迎えられた。黒ドレス女性と、家政婦のような女性、そして、家政婦が押すワゴンに載せられた、上半身だけのおばあさんだった。ワゴンに載るこのおばあさんが、館主人の奥様らしかった、と言うのも、おばあさんは上半身だけにも関わらず、純白のドレスを纏い、綺麗に化粧を施され、胸には宝石をふんだんにあしらったネックレスが、煌びやかに光っていたからである。

3人に案内され、私は大広間へと通された。大きな大理石の円形テーブルが2つあり、それぞれ5人ずつ、合計10人の客が座っていた。客たちは全員、性別も年齢もバラバラだった。私も空いている席に着いた。まもなく、館の息子夫婦が登場した。彼等曰く、「昨晩、館の主人が殺害された。皆様には、その犯人を推理して、事件を解決してほしい」とのこと。状況を聞く限り、明らかにこの若夫婦が犯人である。遺産に目が眩んでの犯行だろう、ありきたりな話である。何故、わざわざ人を集めてまで、分かりきった事件を推理させるのだろうか。

「それではスタート」の合図とともに、客たちは皆一斉に立ち上がって、館内の調査へ乗り出した。

5時間57分30秒。