夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第342夜

カヌーで川を下っていた。山間を縫うように出来た谷を流れる、幅の狭い川だった。一番下まで下って行くと、川の最後は、ヨーロッパの宮殿の中庭にあるプールに続いていた。真っ白な大理石に囲まれた、美しいプールの真ん中でカヌーを降り、私はプールを泳いで、宮殿へと上がった。建物の中へと続く扉を開けると、赤いカーペットが敷かれた薄暗い廊下の向こうから、甲冑姿の兵士が歩いて来るのが見えた。すぐさま廊下の角に隠れたが、あっという間に見つかり、大勢の兵士を呼ばれてしまった。兵士たちは全員、銃を構えていた。私は覚悟を決め、思い切り全力疾走しながら、宮殿の奥を目指した。背後から途切れることなく銃弾が飛んでくる。全ての銃撃を避けながら、廊下を走り、更衣室の窓から外に出て、外階段へと飛び出した。

刹那、これまで平然と避けられていたはずの銃弾が、左側頭部にぶち当たった。いや、銃弾だと思ったそれは、象に刺すような長い麻酔針であった。私は膝から崩れ落ちた。左側頭部から、ジワジワと麻酔が侵食してくる感覚があった。まず頭皮の感覚が無くなり、徐々に脳の弾力が無くなって、最後に、視界が暗転した。

8時間38分1秒。