夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第339夜

夜中の駅前ロータリーには、ロータリーを覆い尽くすほどに巨大な、円形の流れるプールが設置されていた。駅舎の蛍光灯に照らされたプールは、反時計回りに流れており、小学1年生から6年生までの、合計500人近くの子どもたちが浸かっていて、満員だった。混んでいるにも関わらず、子供たちは全員、プールの円の縁に沿って進んでおり、と言うのも、プールの中心部には、世界滅亡を止めるための「生贄」を入れる宝箱が、口を開いた状態で設置されていたからである。

私が子供たちに混ざって、プールを何周も泳ぎ進んでいると、後ろから追い越そうとしてきた同級生が、唐突に私の腕を掴んで、「あなた、宝箱が初めて開いた時に吐き出された煙を浴びたよね?」と言う。「だからお前が生贄にふさわしい」ということらしい。私は、確かに宝箱に手を触れた記憶もあるし、その際に煙を浴びたかもしれないが、生贄として差し出されるのはごめんなので、「そんなこと知らない」と言って拒否した。

そんな中、突如、数人の子供たちが、自らの意思で宝箱に近づき、その前に並びだした。まだ6、7歳だろうにも関わらず、自分たちが生贄にふさわしい、と思ったらしい。私は、今ここで私が立候補して生贄になれば、この子たちは生きたまま家に帰れるのだ、と分かって、泣きたくなった。

7時間37分35秒。