夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第218夜

トイレに行きたくなったので、駅前のデパートに立ち寄った。エレベーターに乗り込み、3階のトイレを目指そうと思った。エレベーターの扉が開くと、中には、エレベーターの半分以上を占める巨大なベビーカーと、その傍には母親、母親の足元には3人の小さな子どもがいた。私が乗り込むと、母親は「トイレのある階でしょ」と冷たく言い放って、3階のボタンを押した。私は気まずさを感じながらも「はい、ありがとうございます」と答えて、降りる時には殊更丁寧に「ありがとうございます。お手数をおかけしました。恐れ入ります」とお礼を言った。

いざ3階のトイレに入り、個室のドアに手を掛けようとしたところで、背後から知らないおばさんが歩いて来て、私の背中にピッタリと身体を密着させてきた。驚き、「何ですか」と言うと、おばさんは「礼儀のなってない子ね」などと言う。先程のエレベーターの件について言っているようである。私は、母親にきちんとお礼を言った旨を伝えるが、おばさんは納得しない。くどくどと説教を始めるおばさんに、私は我慢ならなくなり、「もういい。PARCOのトイレに行きます」と叫んで、トイレから駆け出した。途端に、デパートの各階の店員たちが、一斉に私を追いかけて来た。私はエスカレーターを滑り落ちるように駆け降り、そのままの勢いで1階のエントランスを飛び出し、デパート前の交差点に走り出た。余りに勢いづいたから、私は交差点のど真ん中で躓き、そのまま前転して、私の身体は仰向けの状態で横断歩道に叩きつけられた。

交差点を行き交う大勢の人が、仰向けで伸びる私を見下ろしていた。目の前には、私が今逃げ出して来たデパートが聳え立っていた。薄れゆく意識の中、デパートのビルの壁面に、ぼんやり「PARCO」の文字が見えたような気がした。

7時間51分43秒。