夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第165夜

玄関を開けると、ゾンビが行き交う街である。私は郊外まで避難するために、駅前のマクドナルドでありったけのポテトを買い込んだ。店員のお姉さんは、自分がいつ目の前の仕事を捨てて逃げるべきか、図りかねているようだった。

私は大量のポテトを抱えて車に乗り込み、高速道路の方向へ走らせた。途中、路肩に、ゾンビになりかけている女性を説得する青年がいたから、女性から引き剥がして、車に乗せた。女性は、青年の恋人だったと言う。

やがて、車は県境を越えた。サービスエリアで降り、青年と2人で夕食を食べて、建物の裏手に出ると、そこはまるでゾンビも人も存在しない世界かのように、青々美しい芝生が静かに輝いていた。中心には、広く澄んだ湖もあった。久しぶりのオアシスに、私が湖を覗き込んでいると、突然、何者かに背中を押され、私は水に落ちた。水深が数十メートルもあるようで、深く、水中には背の高い水草の群生と、小魚の大群が、水面から差し込む陽の光を浴びて、生き生きと揺れていた。私は輝かしい生命たちと、そのさらに上にゆらめく水面を見上げながら、ゆっくりと水底へ沈んでいった。

目が覚めると、私は芝生の上に仰向けになって寝転んでいた。どこからか微かに、青年の鼻歌が聴こえいた。私は、私を湖に突き落としたのは、あの青年だと確信した。美しい世界だと思った。

7時間22分48秒。