夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第100夜

その水族館には、超巨大水槽があった。幅20メートル近くあり、深さは1400メートルある。膨大なスケールの水槽はたっぷりの海水で満たされており、海をそのまま切り取ったように、数メートル級の海藻やゴツゴツとした黒い岩壁がレイアウトされていた。照明は暗く、巨大水槽は夜の海であった。夜の海の底、白い砂の中から、1匹の小さなカメが這い出てきた。親指サイズほどの、ほんの些細なカメであった。カメは少しの間、砂の上を這い回った後、小さな後ろ足で砂を蹴って、水中へと泳ぎ出た。カメは遥か頭上にある水面を目指して、深さ1400メートルある水槽を上へ上へと昇っていく。不思議なことに、数メートル昇るごとに、カメの体はひと回り、またひと回りと大きくなっていった。1時間以上かけ、水面までもうわずかという時には、リクガメほどの立派なカメになっていた。カメは水面に顔を出し、飼育員たちが歩き回る陸へと上がった。大きな体と重そうな甲羅を揺らしながらノソノソ歩き、飼育員が並べてくれたキャベツの葉を食べていた。

6時間36分37秒。