夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第55夜

高校3年生の冬、明日で死ぬことが決まったので、文化祭で賑わう校舎を巡り歩きながら、同級生たちにお別れの挨拶をしてまわった。普段から仲の良い人や、小学校卒業以来一度も喋っていなかった人まで、ひとりひとりと握手して、一言「お元気で」と伝えた。泣いている人も居たが、私は努めて笑顔で挨拶した。次の日、見送りの同級生数人に見守られながら、私はひとり、数メートル四方の巨大な水槽に飛び込んだ。ゆっくりと水中へ沈んで行き、口からゴポゴポと空気が漏れて、気管に水が押し寄せ、流れ込んだ。入水から数十秒で、やがて、肺いっぱいまで水で満たされた。

7時間56分15秒。