夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第300夜

演劇の舞台稽古にやって来た。稽古初日だから、私はまだセリフを完全に暗記できていない状態だったのだが、いざ稽古が始まってみると、他の役者陣は全員、台本を手放した状態で演じ切っている。しかも、稽古場と思われたその場所は、実は開放された舞台のセットであり、外からお客さんが勝手に入って来て、私たちを取り囲んで観劇し始めた。私は、わずかに暗記していたセリフも飛んでしまって、完全に頭が真っ白になってしまった。私のセリフの番になり、役者陣と客の全員が私に注目する中、何も言えないと思っていた私の口からは、どういうわけだか、勝手にセリフが発声された。私の身体は、私の意識と分裂して、混乱している意識とは無関係に、平然と役を演じていた。私は意識だけの状態で空中に浮かび上がって、その様子をただ呆然と眺めていた。

5時間12分54秒。