夜間日記

2022年8月1日~2023年7月31日

第60夜

北海道のリゾートホテルでアルバイトをしていた。映画館も併設されている巨大ホテルで、正面玄関のロビーは3階まで吹き抜け、中央には大きなシャンデリアが吊るされていた。内装は豪華な造りだが、建物の外観は「銀座のビジネスホテル」のようなシンプルな見た目だった。

私は映画館の客席にコップを置いていく仕事をしていた。他のアルバイト数名と一緒に、客室棟の倉庫からマグカップやワイングラスなどを取り出し、1人4個ずつ抱えて映画館まで運び、客席ひとつひとつに1個ずつコップを置いていった。倉庫から出して、運んで、置いて、を何往復も繰り返し、私は疲れてしまったので、従業員用トイレで休憩しようと思った。トイレの個室に入り、鍵を閉めて、ふうっとため息をついていると、個室のドアが激しくノックされた。どうやら、このトイレは客室棟から映画館までの通り道になっており、私がトイレに立て籠ってしまうと、他のアルバイトがコップを抱えたまま足止めを食らうらしかった。

5時間5分35秒。